サッカーの歴史には、数えきれないほどのフェイントが存在します。
シザーズ、ダブルタッチ、ルーレット、マルセイユターン。
これらは今も多くの選手が使い、試合の中で重要な役割を果たしています。
しかし、その中で技の名前を聞いただけで、特定の選手の顔が思い浮かぶフェイントは、実はそれほど多くありません。
技と選手のイメージが完全に結びついている。
それは、単に技術が高いだけでは到達できない領域です。
その代表格が「エラシコ」。
そして、このフェイントを単なるテクニックではなく、
サッカー史に残る伝説へと押し上げた存在が、ロナウジーニョでした。
彼のエラシコは、見る者に驚きだけでなく、楽しさや高揚感すら与えました。
だからこそ、今も語り継がれ、映像が再生され続けているのです。
ロナウジーニョのエラシコとは?基本構造と難易度
エラシコは、一見すると非常にシンプルなフェイントです。
動き自体は、サッカー経験者であれば誰でも理解できる構造をしています。
- アウトサイドで一度、相手の外側へボールを動かす
- その直後、インサイドで一気に内側へ切り返す
文字で説明すると、たったこれだけです。
しかし、実戦で成功させるのは極めて困難です。
なぜならエラシコは、
人間が無意識に行ってしまう「重心移動」そのものを利用するフェイントだからです。
相手DFは、ボールが外に動いた瞬間、
「外に抜かれる」と判断し、反射的に体重を外側へ移動させます。
一度動いた重心は、すぐには戻りません。
そのわずかな時間差を突くのが、エラシコの本質です。
理論上は理解できても、
相手の動きを見ながら、正確なタイミングで切り返すには、
極めて高いボールタッチと判断力が求められます。
エラシコはスピード勝負の技ではない。
相手が「信じて動いた瞬間」を支配するフェイントだ。
なぜロナウジーニョのエラシコは「伝説」になったのか
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エラシコという技自体は、ロナウジーニョ以前から存在していました。
しかし、多くの選手にとってそれは「練習でできても、試合では使えない技」でした。
それでも、このフェイントがロナウジーニョの代名詞として語り継がれる理由。
そこには、いくつかの決定的な違いがあります。
ロナウジーニョのエラシコが別格だった理由①:緩急で相手の判断を壊した
ロナウジーニョのエラシコは、映像で見ると意外なほどゆっくり始まります。
スピードに乗ったドリブルの中で、あえてテンポを落とすのです。
その一瞬の「間」。
相手DFが「今だ」と判断する時間。
その直後、
まるでスイッチが入ったかのように、内側へ一気に切り返す。
相手は反応したつもりでも、
すでに重心が外に残っているため、対応が間に合いません。
彼は速さで抜いたのではありません。
相手の判断そのものを狂わせてから抜いたのです。
この緩急の使い方は、
単なる技術ではなく、相手心理への深い理解があってこそ成立します。
ロナウジーニョのエラシコが別格だった理由②:予備動作がまったくない
多くの選手は、フェイントをかける前に体が反応してしまいます。
- 視線が進行方向へ動く
- 肩が先に開く
- 軸足の向きが変わる
これらはすべて、相手にとっての「ヒント」になります。
しかしロナウジーニョの動きには、そうした予備動作がほとんどありません。
ボールも体も、自然なリズムの中にあります。
何も起きていないように見える。
だからDFは、分かっていても反応できない。
これは反復練習だけでは身につかない、
天性のリズム感とボール感覚によるものです。
ロナウジーニョのエラシコが伝説になった最大の理由:使う場所が“危険すぎた”
最も重要なのは、エラシコを使った「場所」です。
ロナウジーニョは、このフェイントを――
- ゴール前の局面
- 数万人が見守るスタジアム
- 世界最高峰のビッグマッチ
失敗すれば即ピンチになる場所で、平然と使い続けました。
多くの選手は、安全な位置でしかリスクを取りません。
しかし彼は、最も緊張感の高い場面でこそ、エラシコを選びました。
安全な場所での成功は、ただのテクニック。
危険な場所での成功が、伝説になる。
成功率の高さではありません。
その場面で使う覚悟と美学こそが、伝説を生みました。
まとめ|ロナウジーニョのエラシコは「技」ではなく「思想」
ロナウジーニョのエラシコは、単なるフェイントではありません。
それは、
- サッカーは楽しんでいい
- 観る人を魅了していい
- 自由に表現していい
という、サッカーそのものへのメッセージでした。
勝つためだけではなく、
見る人の心を動かすことも、サッカーの価値である。
だから今も、
彼のエラシコを見ると胸が高鳴るのです。
ロナウジーニョのプレイを体感してみたい方には、
AI AVATARの”R10 Ronaldinho Playground”がオススメ。
きっと楽しめると思います。

